MARGIELA, THE HERMÈS YEARS 前衛と伝統が出会った、1997年から2003年 コンテンツへスキップ

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記事: MARGIELA, THE HERMÈS YEARS 前衛と伝統が出会った、1997年から2003年

MARGIELA, THE HERMÈS YEARS 前衛と伝統が出会った、1997年から2003年

MARGIELA, THE HERMÈS YEARS 前衛と伝統が出会った、1997年から2003年

1997年、マルタン・マルジェラが〈HERMÈS〉のウィメンズ・プレタポルテのデザイナーに就任しました。

今振り返っても、かなり大胆な人選だったと思います。

当時のマルジェラといえば、1988年にMaison Martin Margielaをスタートし、古着の再構築、服の裏側や縫製を表に見せるデコンストラクション、匿名性を伴ったブランド表現など、それまでファッションが隠してきたものを次々と表側へ持ち出したデザイナー。

一方のHERMÈSは、1837年創業。馬具工房を起源に、革製品やシルク、職人技によってフランスのラグジュアリーを象徴してきたメゾンです。

前衛と伝統。

一見すると、これほど離れた場所にいる二者もなかなかありません。

しかし、この本を見ていくと、この組み合わせが決して奇をてらったものではなかったことが分かってきます。


Maison Martin Margielaとは違う、もう一つのマルジェラ

マルジェラが1997年から2003年までの12シーズンにHERMÈSで発表した服は、Maison Martin Margielaで見せていた表現を、そのまま老舗メゾンに持ち込んだものではありませんでした。

カシミヤ、上質なニット、レザー。

色彩はベージュ、ブラウン、ブラックなどを中心に抑えられ、シルエットにも過剰な装飾はほとんどありません。

ただし、何もしていないわけではない。

身体を締め付けない構造や、服を重ねたときのバランス。
着脱のしやすさ。
肌に触れたときの感触。
そして、一着を長く着続けること。

見た瞬間のインパクトではなく、実際に着る人にとって何が豊かなのか。

マルジェラはHERMÈSという場所で、それを徹底的に考えていたように見えます。


「ヴァルーズ」という服


その思想を象徴する一着が「Vareuse(ヴァルーズ)」です。

深く開いたVネックを持つ、一見すると非常にシンプルなトップス。

しかし通常のシャツのような前開きを持たず、大きく開いた襟ぐりを利用して着脱する構造になっています。

装飾を増やすのではなく、服の構造そのものを考え直す。

Maison Martin Margielaで服を解体し、既成概念を問い直していたデザイナーが、HERMÈSではまったく違う表情で同じように「服とは何か」を考えている。

ここが、この時代のマルジェラの面白さだと思います。


若さだけを美しさの基準にしなかった


もうひとつ、この時代を語るうえで興味深いのが女性像です。

90年代のファッションが若さや新しさを強く求めていた中で、HERMÈSでのマルジェラは、特定の年齢だけを理想の女性像として設定しませんでした。

さまざまな年齢の女性が着られる余白を服に残す。

服によって着る人を別人に変えるのではなく、その人自身が自然に存在できる服をつくる。

これは現在でこそ理解しやすい考え方ですが、90年代後半という時代を考えると、かなり先を見ていたように感じます。

 

ラグジュアリーとは、何なのか

マルジェラのHERMÈS期を見ていると、「ラグジュアリー」という言葉の意味について考えさせられます。

ロゴがあることでも、装飾が多いことでも、誰が見ても高価だと分かることでもない。

良い素材を使う。
身体にとって心地よくつくる。
必要な構造を考える。
そして、長く着られる。

もちろん、それ以前からHERMÈSが大切にしてきた価値観でもあります。

だからこそ、表現方法はまったく違って見えたMaison Martin MargielaとHERMÈSの根底には、実は流行や表面的な価値だけに左右されず、物そのものを見るという共通点があったのかもしれません。

この二者が出会ったことで、HERMÈSの伝統を壊すのではなく、その本質を別の角度から見せるコレクションが生まれました。

 

25年以上経った今、なぜ新しく見えるのか

この本を見ていて一番面白いのは、1997年から2003年につくられた服なのに、ほとんど古さを感じないことです。

素材を大切にすること。
必要以上にものをつくらないこと。
一着を長く着ること。
年齢によって服を区切らないこと。
ブランドの記号ではなく、プロダクトそのものを見ること。

現在のファッションが改めて向き合っている価値観の多くが、すでにここにあります。

だから「昔の名作を見る」という感覚だけではない。

今、自分たちが着ている服や選んでいるものが、どこから繋がってきたのか。

その一端を見ることができるのが、この一冊だと思います。

 

MARGIELA, THE HERMÈS YEARS

 

本書は、2017年にアントワープのMoMuで開催された展覧会『Margiela, The Hermès Years』に伴って刊行されたカタログを、2024年に再版したものです。

HERMÈS時代のコレクションやイメージフォト、ドローイング、アーカイブ資料などを280ページにわたり収録。

関係者へのインタビューに加え、Rebecca Arnold、Kaat Debo、Sarah Mowerらによるエッセイ、Suzy Menkesによる序文も収められています。

Maison Martin Margielaの“前衛”と、HERMÈSの“伝統”。

その二つを別々のものとして知っている人ほど、この一冊を見るとマルジェラというデザイナーの見え方が少し変わると思います。

僕自身、こういう本を店に置きたいと思う理由もそこにあります。

服を見るとき、今シーズン格好いいかだけではなく、その形や考え方がどこから来て、今のファッションにどう繋がっているのか。

それを知ると、普段何気なく見ていた一着の見え方まで少し変わる。

マルジェラが好きな方はもちろんですが、
長く服が好きな人にこそ、じっくりページをめくってほしい一冊です。

MARGIELA, THE HERMÈS YEARS
Martin Margiela
240 × 300 mm / Hardcover / 280 pages
Published by LANNOO

店頭・ONLINE STOREにて。

OKOLO FUKUOKA
2-2-22 Otemon, Chuo-ku, Fukuoka City, Japan
@okolo_fukuoka


 

 

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